1.突如表明されたIPEF
米国の国際貿易交渉については、トランプ大統領が政権を担っていた平成29年に多国間広域協定であるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の永久離脱を表明し、二国間交渉を中心に進めていく方針を打ち出していました。
そのような中、突如、米国は今年5月のバイデン大統領の来日に合わせ、米国主導の経済圏構想「IPEF(インド太平洋の経済枠組み)」の発足を表明しました。
米国は、IPEFをTPPの代替として位置付けてTPP脱退によるアジアでの空白を埋めるとともに、影響力を強める中国に対抗する狙いがあるとされています。
2.IPEFの概要と日本の対応
IPEFは、価値観を共有する国・地域が貿易・投資上の共通ルール(4つの柱で構成)を設定する枠組みで、これまでの貿易協定と異なるのは「関税引き下げ」を求めていないことが大きな特徴です。
5月23日の日米首脳会談で、岸田首相は、国際情勢の混乱によりエネルギーや食料安定供給が危機にさらされている昨今の状況について述べ、日本としてIPEFへの参加・協力を表明し、日米含む13か国で協議が進められることとなっています。
3.日本農業への影響
IPEFは、従来の自由貿易協定のように関税の撤廃・削減の協議は含まれていないことから農畜産物への影響はないと見られています。しかし、米国内では、議会や主要農業団体の一部から、IPEFにおける関税交渉を求める声が根強く上がっているため、今後の動向を注視していく必要があります。