1.過去の農産物検査見直しの議論
農産物検査の見直しについては、これまでも度々見直しの必要性について論議されています。2010年民主党政権時は、行政刷新会議で未検査米の年産・品種の表示が提起されていましたが、どのようにそれを証明するかが「見込めない」とし、審議が終了していました。
さらに、2016年にも規制改革推進会議(構造改革を進めるために内閣府に設置された審議機関)より農産物検査の見直しが再び提起されましたが、農林水産省は実務者会合を実施し、現行の仕組みを維持することを前提とした論点整理を行っていました。
2.突如再浮上した農産物検査の見直し論
そのような中、規制改革推進会議農林水産ワーキンググループにて、突如2020年1月より農産物検査の見直しに関する議論が開始され、現在の農産物検査規格等について1年程度で総点検を行うよう政府に答申されました。また、農産物検査に代わる方法で補助金の助成対象数量を確認することなども答申に盛り込まれました。
【答申の概要】
- 農産物検査規格および商習慣の総点検を行い、1年程度で結論を得る。
- 数量品質の確認が必要な補助金(ナラシ、ゲタ、水田活用直払等)については、農産物検査に代わる手法により助成対象数量を確認することにより支援対象とする。
- 産地・品種・年産の食品表示について、検査米、未検査米双方表示を可能とするが、検査や取引に関する記録の保存方法など、食品表示基準等やその運用で担保する。
3.懸念される生産・流通・消費の影響
この答申を受け、農林水産省では、農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会で協議が始まりました。
農産物検査が果たしてきた品質確保の仕組みが損なわれては、米の生産・流通・消費の各段階に混乱が生じかねません。
今後の議論の行方に注視してください。