1. 2021年度予算概算要求の概要
農林水産省は、総額2兆7,734億円の2021年度予算概算要求を財務省に提出しました。今年3月に見直しが行われた新たな食料・農業・農村基本計画や新型コロナウイルス禍を受け、生産基盤の強化や農産物の輸出拡大などが柱となっています。
(1) 次世代に引き継げる生産基盤づくり
今回、新たな事業として、麦・大豆の増産をソフト面・ハード面から支援する麦・大豆増産プロジェクトが盛り込まれました。また、園芸作物の基盤強化に向けた持続的生産強化対策事業、農業経営者の経営継承を支援する事業など、コロナ禍においても、産地の営農継続を確保し、次世代に引き継ぐことを目的とした予算要求となっています。
(2) 輸出額5兆円に向け、前年度予算の3倍を要求
新たな食料・農業・農村基本計画では、2030年に農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする目標を掲げており、2019年実績の9,121億円から大幅な増加が必要とされています。今回の概算要求では2020年度予算の2.7倍となる総額228億円が輸出力強化対策に計上されていることから、輸出促進を地方活性化の柱と位置付ける菅首相の意向が強く反映されています。
2021年度農林水産関係予算 概算要求 | |
総 額 |
2兆7,734億円 |
主な事業 | 予算額(億円) |
持続的生産強化対策事業 野菜や果樹、茶、花などの生産性向上や販売力強化、地方公共団体の産地発展に向けた取り組みを支援 |
215 (194) |
水田活用の直接支払交付金 麦、大豆や飼料用米などへの助成、産地交付金での産地づくりを支援 |
3,050 (3,050) |
「麦・大豆増産プロジェクト」の推進 麦・大豆の生産体制強化、安定供給を推進 |
60 (新規) |
強い農業・担い手づくり総合支援交付金 農業機械・施設の導入や、加工・業務用農畜産物の国産切り替えなどに対応する施設整備を支援 |
245 (200) |
スマート農業総合推進対策事業 スマート農機の共同利用サービスの実証や低価格農機の開発支援 |
55 (15) |
農業農村整備事業 農地の大区画化や防災重点農業用ため池対策の強化を推進 |
3,983 (3,264) |
経営発展・経営継承の推進 家族経営など担い手の経営を継承し発展する取り組みを支援 |
70 (11) |
多面的機能支払交付金 農地を維持する地域活動などに交付金を交付し支援 |
491 (487) |
中山間地域等直接支払交付金 棚田を含む中山間地域での農業生産を支援 |
268 (261) |
農山漁村の情報通信環境や生活インフラの整備 田園回帰に向け、情報通信環境、農道、集落排水施設の整備を推進 |
73 (新規) |
※( )内は2020年度予算額 |
2. 今後の予算編成の動向とJAグループの対応
政府・与党では、12月下旬まで、来年度当初予算と今年度第3次補正予算の協議が行われます。
JAグループでは、これらが現場実態を踏まえたものとなるよう、政策提案や予算要望をすすめています。本県JAグループとしても、生産者が取り組みやすい柔軟な制度構築を通して、本県の農業振興と農村の活性化を求める意見を提出しています。